作成日:2018/10/12
最終更新日:2021/1/21
電子ペーパというのは台湾のEink社が販売している、電気泳動を利用して、画面上に浮かび上がる色を不揮発に変更させることで、描画(画面更新)を行う瞬間以外電力を消費しないタイプのディスプレイのこと。広義に電子ペーパーというと、他にも色々な方式があり、それぞれ特徴があるらしいが、DPT-RP1で使用されているものはEink社の電子ペーパーなので、以降の「電子ペーパー」はこの方式のものをさすことにする。
Sonyから販売されているDPT-RP1は、表示部分が13.3型のフレキシブル電子ペーパー(解像度1650×2200ドット)で、A4の紙とほぼ同じサイズ。
値段は79800円+税。A5サイズのDPT-CP1が69800円+税(2021年時点では価格改定が入ってDPT-RP1が68,000円+税、DPT-CP1が49,819円+税になっています)
外観としては右の写真の通り。右上についているのは専用のペン。これがないとほぼ何もできない。筐体の左右上側にスリットが入っている。ペンにはそのスリットに挟まる形状の出っ張りがあり、磁石で弱くくっつく。写真の状態で手に持って歩いていると外れるということはまずなく、カバン等に縦向きに入れるとカバンの中で外れる、という感じ。まあ、多くの人は手提げかばんとかで横向きに入れるので問題にはならないでしょうけど。
筆者は既に1年以上これを使っていて、すでに手放せなくなっているので、無意識にひいき目なレビューになることは自覚していますが、それでも、読む価値はあると思う。いや、あるように頑張ります。
大人の事情でかなり色々な側面から評価していて、その過程で否定、肯定両方の意見が大量に蓄積されているので、何回かに分けて更新予定です。
DPT-RP1のデフォルトの表示。スリープ状態ではこの表示になる。今更だが壁紙の設定くらいできてもいいのではと思った。
冒頭からえこひいきしていますが、使って、慣れてから判断してほしい、そんなデバイスです。
体験で少し使ってみて、だと多分買えないです。あほみたいに分厚い手帳を持ち歩いて、それでも書くものが足りなくてメモとかレポート用紙とかを持ち歩いてしまうそんなあなたに使って、そして買ってほしいデバイスです。
一度、バーで酔っ払って、翌日仕事を休んだことがあったのですが、休んだ第一の理由は、バーに荷物を置き忘れて、これなしで仕事をする気が起らなかったから、というくらい、これを愛用しています。まあ、次のTopicにもしていますが、iPad proでいいんじゃね?というやつは殴ります、マジで。
用途は、当たり前ですが、紙の置き換えです。これを持つまでは上に書いた通り分厚い手帳を持って、メモ用紙を持って、時には紙の資料やドキュメントを持ち歩いて読んだりしていました。それが全部この400g程度に収まります。まずそれだけで素晴らしい。
あと、大したことじゃないといえばそうなんですが、テンプレートを用意しておけば、大学ノートでも、リーガルパッドでも、方眼紙でも、カレンダーでも、手帳でも好きなだけ、欲しいタイミングで使えます。
また、デジタルなので、コピペができる。ボールペンみたいに書けるのに、消したりもできる。これのおかげで打ち合わせの後にメモを清書して取っておくのが非常に楽になったし、打ち合わせ中に手帳のページが足りなくなるということもない。この辺はPCで出来るんじゃないの?という指摘もあるとは思いますが、必ずしも文字だけ書くわけではないので。あと、メモって取り消し線で消した、という事実も意外と大事なメモになったりするので、色々とっておけるデジタルペーパーは非常に便利。拡大して細かく書いておいてから元の寸法に戻すと、従来の紙よりもはるかに多くの情報を一つの視野に収められるというのも大きな利点。月捲りカレンダーに用事なんか全部入れられないよ!とリアルな紙の時代には思ってましたが、DPT-RP1だと余裕。
説明の図を手書きで書いた時も、自分に元の絵を残しつつ電子データで送る、なんてことが簡単にできる(この程度ならiPad proの方がいいと正直に思います)。
買った当初には全く想定していませんでしたが、契約書の類をこれに取っておくと、スペース的にも実務的にもすごく便利です。
他には子供の漢字ドリルの代わりに使ったりするのが良いかと思います。デジタルなので無限に書ける。今もあるのかわかりませんが、学校の先生のプリントを全部これにして一括配信すれば無駄な紙がなくなって本当にいいと思う。
この用途は一般の方には通じないと思いますが、回路図チェックにおいても力を発揮します。
この手の記事を書くと、訳知り顔で偉そうに「iPad Proでいいんじゃね?」と言いたくなるでしょう。気持ちは分かります。似た形状をしていて、値段も安くて、CPUはサクサク、ストレージも大量、ネットワーク接続もできて、文字認識も出来る。そもそもカラーだし。そう言いたいんでしょう。ですが、言わせていただきましょう。あなたは間違っていると。ただのアップル信者で使いもせずに他のものをディスっているだけだと。いくつかの観点から指摘させていただきます。後から増えるかもしれませんが、基本的なポイントは以下3点です。
なぜあなた方がiPadを使うのか
多色を使いこなしている奴なんか対していない
DPT-RP1を買うのは便利な紙が欲しいから(どんなに性能がよかろうかiPadは紙ではない)
まず、1ですが、iPadを買う理由は何でしょう?それまで馴れ親しんだwindowsを捨て、何となくAndroidを嫌ったのは何故なんでしょう?それは、「使い方が直感的でなかった(後、フォントが汚い)」からではないでしょうか。ボタンなんか少ない方がいいし、タッチがうまく反応すればブラウジングも快適。しかもRetinaで解像度が高く、撮った写真がきれいに見える。しかもみんな使っている(日本限定?)からではありませんか?DPT-RP1と比較するときにも同じことを考えるべきです。紙に書くときにアプリを起動しますか?紙に文字を書いているときにプッシュ通知が来るでしょうか。いきなりアプリが落ちて書いた内容が消えるでしょうか?この話をするとき、皆さんはいいところに言及するのですが、実は議論の本質はそこにはないのです。まあ、DPT-RP1は高すぎですけどね。どう考えても、ただ筆記を代用する程度だとランニングコストがおかしなことになります。
次に2ですが、ずっと鉛筆とシャープペンシルで育ってきた私にカラフルなものは必要ない。もうそれだけです。1にも関連しますが、どのユーザを想定しているのか全く意味不明だったガラケーの多機能に見切りをつけてiOSに走った人がこんな指摘をしてくること自体が理解できません。
最後に、3です。実際的な観点からiPadをディスっておきます(iPadがダメなデバイスということではないです。私だってiPad mini4とDPT-RP1を比べて普段手に持っている時間は絶対にiPad mini4の方が長いです)。あくまで、実用的な紙としてみたときの話です。
ガラス面はペンが滑る:一見どうしようもなさそうです。ただ、アクセサリで鉛筆の書き味のような書き心地になるシートがあるらしいです。それを聞いたときは正直絶望しました。でも、他の通常の用途も考えると結構微妙らしいです。ちなみに書き味もそうなんですが、文字を書くときは普通、紙のように机の上において、ペンを持って書くことになるわけですが、ガラス面はべたべたして普通に気持ち悪いです。試し書きとかはiPadを手に持つか、立てかけてあるiPadや机の上に置いてあるiPadに立った状態で書くはずで、この時今言ったような問題は起こりませんが、通常の運用ではそんな特殊な書き方しません。画家じゃないんだから。
ペンの充電が終わってる:あのライトニングコネクタをさすやり方はないでしょ。Apple Careに入らせるための嫌がらせにしか感じられない。充電しながら持ち歩けないし、書けないしで紙としては使えない。横につけられるようにするとか、延長ケーブルとか、もっとなんかあったんじゃないかと思わずにはいられない。
消しゴムの操作にディスプレイが必要:全然大した機能じゃないがDPT-RP1はペンに消しゴムボタンがついています。打ち合わせのメモでペンと消しゴムを切り替えている暇なんかない。
多分、サスペンド設定が面倒:紙は書いたら置きっぱなしが基本。でもiPadで筆記の機能のためだけにサスペンド時間の設定を緩くするとバッテリの消耗が厳しそう
言いたいのは「目的が違えば当然ハードウェアが異なる」ということです。
拡大画面。筆跡をさらすのはセキュリティ上NGでは、と思い荒い画面にしています。字が汚いのは本体(人間)の問題でワークアラウンドは無い。
本当は持っている人に使わせてもらうか、ソニープラザとかの展示で触ってみるのがいいと思いますが、ここでは画面だけ。
画面上では解像度の問題もあって、細かく見ると変な感じがしたりしますが、筆跡はきれいに再現されます。また、これで書いたものをPCにコピーして印刷させてみると、実際の紙にボールペンや鉛筆で書いた自分の字が出てきて感動します。
実物の紙と大きく異なるのは、描画に遅延があることと、バッテリ切れなどの理由でフラフラした描画になること、設定した紙の向きが大きく影響するということ。最後のはわかりにくいのでどこかで現物で試してほしいですが、DPT-RP1は元のテンプレート、PDFの向き(神の縦横)に置くことを前提に設計されていて、その向きに対して、書き手のペンが来る形(一定の角度を想定)になっている。そのため想定されていない向きで書こうとすると、実際に書いているつもりの位置とかなりずれる(そのため、体に近い位置にペンを持ってきたり、DPT-RP1を斜めに持って書こうくると、角度が想定外になって、これまた位置がずれる)。
ペンの太さは5段階。私は、概ね下から2番目と3番目を使用している。私の使い方だとペンが太いと漢字がつぶれて読めないことが結構ある(なので写真のようにアルファベットで書く癖が付いた)
後、使ってみて気が付くのはペン先が消耗品であるということ。鉛筆タイプとボールペンタイプ(どちらも入力は同じになるので書き味、とか、抵抗感という意味でのタイプ)があり、ボールペンタイプの方が多分削れやすい(削れた線が残光のように見えるくらい。最初は故障かと思ったが、画面を拭いたら取れました)。まあ、これは、ディスプレイ側の保護を考えると当然。(ディスプレイの方が弱い方と致命的で、パネル交換が発生する)
使い始めの当初は、色々試して書いていたということ、実物の鉛筆、ボールペンのような筆圧で書いていたということもあり、消耗が大変早かった。ペン先はどちらのタイプも10本で約2000円で、1本目は1週間でなくなったので、そこから想定されるランニングコストに絶望したが、慣れてくるとあまり減らなくなってくる。鉛筆タイプの替え芯(10本で2000円)を1~2年に1回買うというイメージ。
今でもまれに紙に鉛筆で書くことがあるが、その時にはDPT-RP1に書く筆圧で書いてしまうので、薄くなってしまうのが難点。
まず、私はDPT-CP1を一度も触ってないということを断っておきます。なので、DPT-RP1を使った感覚と、スペックから見た推測でお話しします。
スペック的には画面サイズ(解像度)と重さ以外は変わらないことが公式サイトから読み取れます。なので、用途で変えればいい(又は用途で使い分ける)のがいいと思います。筆者個人は解像度至上主義者(iPadを購入する理由は基本的にはこれだけ)なので、どちらを選ぶか聞かれれば、13.3インチのDPT-RP1を選ぶと思います(実際には先に発売されたDPT-RP1を即買いしているので、比較したことはない)。基本的に困ったことはないですが、イベント会場などでメモを取りながら移動しようとすると、結構邪魔になることがあるので、取り回しが重要なシチュエーションでは10.3インチのDPT-CP1が欲しくなります。
まあ、個人的には両方ほしいってことです。
(2019/5/1追記)ハード的には同等なFCCL製のP02を購入しました。こっちの方が外出先では使いやすいです。基本拡大して使うので、サイズが小さい方が有利に働きました。
専用のPC用(またはタブレット(スマホ)用)ツールがあって、PC(タブレット)側からファイル転送(置く方も取り出す方も)します。接続はPC版はUSB, Wi-Fi, BT、タブレット版はWi-Fi(多分、USB(Lightning) to EthernetとかすればEtherでもできる)。個人的には普段の用途はBTがおすすめ(消費電力がほとんど気にならないと、PCだけカバンから出していて、データ転送ができる。またPC側のネットワーク接続に依存しない(VPNを張っているとDPT-RP1がWi-Fiで見えない))。PC側にバックアップを取るとき、またはサイズの大きいファイルの転送の際にはWi-Fiを使用します。
また、デジタルペーパの画面をPCに表示することができて、PCの画面を大きいディスプレイ等に表示すると、黒板ライクに使えます。人に何か説明するときに便利。
具体的にはパワポのスライドをPDFに変換しておいて(DPT-RP1(CP1)はPDFしか読めない)、画面表示させると、適宜落書きを書きながら説明、なんてことができます。単純に板書の代わりでも使えます。黒板と違って、ページの行き来が楽なのと、黒板より書きやすいので、私個人としてはおススメです。ただし、結構データ転送が重いので、接続はUSBにしておいた方がいいかも。
PC等と違って、ほとんどフリーズ、再起動がないので、バックアップはあまり取らないのですが、PC側のツールで一括で同期とってバックアップはできます。
まあ、動作速度、という意味ではPCのビュワー(Acrobat)には勝てません(Chromeのビュワーは酷すぎるので、こちらには負けない→今はChromeもそんなに悪くは無くなった)。ただ、解像度の観点から使いやすいことも。ピンチ操作すると16分割の表示になって、スワイプで16ページ分表示変更、タッチでそのページに移動となりますが、解像度(dpi)が高いので、サムネイルの状態でもかなりちゃんと読める。手帳代わりに使っていますが、どの日に何が書いてあるか大体見れて便利です。私は月ごとにファイルを分けているので、2画面で一か月分見れます。あと、タブレット、スマホほど画面を触ってないからかもしれませんが、指紋は気にならないです。ただ、上にも書いた通り、削れたペン先等で画面は汚れるので、メガネ拭き等でたまに拭きます。
オライリーの電子書籍はPDFなので、非常に見やすいです。昔は物理的な本に重きを置いていたのですが、持ち運べて、本のように読める(iPad、Android(というか液晶)は読書に向かない)端末があるとPDFでの購入にためらいがなくなりました。
まあ、ここまで紙としての使い勝手を若干ひいき目にお話ししてきましたが、実用上は検索、それに付随して手書き認識の機能が欲しくなってきます。
DPT-RP1には「マーク検索」という、手書きの星形(☆)とアスタリスク(*)を認識・検索する機能があるのですが、これが意外と関係ない「・」とかも引っかかる。まあ、逆に星とアスタリスクが引っかからなかったことはなかったので、困る、というほどでもないんですが…
あと、手書きを文字で認識しておいて、検索に引っかかるようにぜひともしてほしい。昔、人にiPad Proの文字認識を見せてもらったときは、すごい、とは思ったのですが、文字が手書きからキーボード入力の文字に変換されてしまい、感動はしなかった。一応法人向けには始めているようなのだが、ぜひとも消費者にも開放してほしい。ちなみに、市販のOCRソフトを試してみましたが、少なくとも私の文字はほぼ全滅でした。
(2019/5/1追記)やはりアップデートはありませんね。自分でディープラーニング(手書き文字認識)とかするしかないのか…
非常に残念なことに、実はこの機体、購入時点でひびが入っていました。USBコネクタ部分とペンホルダー(右)の2か所。ペンホルダーは毎日ペンのつけ外しをする過酷な環境であることもあって、つい2か月ほど前にひびの拡大→プラスチック筐体の破損(ペンホルダー部分のプラスチックが外れる)と相成りました。何となくやばいなーと思っていたので、ワイド保障プログラムに加入した矢先の話でした。で、これを修理窓口に持って行った(法人向け製品なので、品川からかなり歩いたところ(品川のラーメン二郎の近く)に窓口がありました)ところ、2日後に対応完了の連絡。早い、ということは多分交換だろうと思っていたらやはり交換でした。
発売日に届いた(実際には海外出張に行っていたので受け取れてはいない)初期も初期の機体だったので、交換は若干残念でした。また、写真は後日アップロード予定ですが、この製品、初期の生産(本体)がMade in Japanだったのですが、途中からMade in Chinaに切り替わっています。なので、今回の交換でMade in Chinaに切り替わりました。Made in Japanのモバイル製品ってあまりないので、これも少し残念です。
上記の件ですが、使い方の問題、かもしれません。今メインで使用しているP02(FCCL版の10.3インチ型デジタルペーパ)が使用半年で無傷から同じ状態になってしまいました(こちらは保証とかないはずなので、欠けた部品は接着剤で付けました)。
自分の手持ちの分は仕方ないとして、ハードウェアのマイナーチェンジ等で壊れないように(この部分だけ樹脂を厚くするとか、補強を入れるとか)してほしいなぁと思いました。
後、5月中旬にファームウェアアップデートがあって、書き味の改善等がなされたみたいなのですが、不具合があるみたいなので結局更新できないでいます。更新していない理由は不具合ではなくWindows7のサポートが外れたことと、この破損の件(今後の使い方をどうしようか決めかねている)が大きいのですが。
非常に残念なことに、DPT-RP1は生産完了になってしまいました。DPT-CP1も生産完了になっているので、ソフトウェアのアップデートも限定的に(というかほとんどなしに)なるかと思います。一番残念なのはカレンダーのPDFが2022年分までしかリリースされないことですが。ただ、今はFCCLのP02がメインになっているので(使い勝手というよりは持ち運び)、実は影響少なかったりします。ただ、こちらも最近は大分値崩れしてきたりしていますので、終息に向かっていくものと思われます。
替え芯やアクセサリは今のうちに買っておかないといけませんね。DPT-RP1は当初はバリバリ仕事用だったので、あまりプライベートな使い方はしていなかったのですが、お絵かきなどに使いましょうかね。
まあ、e-inkからは電子ペーパーデバイスはまだまだ出てきていますし、カラーの電子ペーパーもそれなりに技術が進んできているようなので、次の世代に期待ですかね。