作成日:2022/05/12
メーカー:Sony
購入時期:2022年3月末
製品種別:完全ワイヤレス、開放型イヤホン
特徴:デュアルリスニング
購入価格:20000円くらい
だいぶ前に当サイトで紹介したXperia Ear Duoの後継と思わせておいて微妙に違う製品です。どの辺が違うかは実際に使ってみて確認したので、ここでレビューしていこうかと思います。流れとしては、基本的なスペック(カタログ的なスペック)をざっと書いてみて、それから、STH40Dも含むこれまでのソニーの開放型イヤホンの主に操作性・使い勝手に着目した比較をしていきたいと思います。
ただ、この記事を書き始めて思いましたが、まだ使ってない機能が多数あったり、装着感についても使いこなせてないだけ、の可能性もありますので、その辺は各自補正かけて読んでいただければと思います。
まず、BlueToothについてですが、Xperia Ear Duoが右耳だけに搭載されていた(左右の耳は別の方法で通信していた)のに対して、今回は左耳とケースの両方に入っています。そのため、
左耳だけで使える
左耳とケースのバッテリ残量が分かる
となっていて、この点は単純に進化しております。また、バッテリの減りについても(表示を信じる限り)は左右で代替同じくらいになっていて、ここも良い点かと思います。(Xperia Ear Duoは前述したとおり、右の耳だけ2種類の無線通信を行う関係上、右耳のバッテリの減りが早い)
また、防水性能ですが、IPX4相当(但し書きがたくさんついている)となっていて、相当胡散臭いです。仕様の表にも書いていないあたりがかなり怪しい。スポーツにも安心して使用できるとありますが、ここもかなりの疑問です(詳しくは後述します)。バッテリの持ち時間などは伸びています。5.5時間はJabraのElite Active 75tと同じスペックなので、これが真実であるなら結構長持ちする部類に入ると思います。ただ、4時間と書かれていたXperia Ear Duoはハーフマラソン(約2時間)ギリギリ持たないくらいだったので、せいぜい3時間くらいかも、と思わなくもない。この辺は使っている機能にも依存するはずなので、人によっても感じ方が変わってくると思われます。連続通話だと(別にこの製品に限らず)ざっくり半分くらいの持ちになるので、長丁場のWeb会議はきつそうな気がします。
とか書いていたら、ソニーの開放型としてリリースされていたSBH82Dも買っていたことを思い出しました。ただ、この記事を書いていて思い出す、というところからお察しいただけるかと思いますが、使い勝手にかなりの難がありましたので、比較表に入れてみることにします。
ということで、項目に相当の偏りがありますが、開放型(&仕事で使ってきたJabra製品2種)の比較をしてみました。用途が仕事(オンライン会議または電話)、ないしランニングなので、そこに関連するような項目しかありませんが悪しからず。一部が装着感①、装着感②とか一読してわからない項目名になっているので、解説していきます。
まず、マルチポイントですが、これは、複数機器(通常は2台)とのペアリング状態を維持する、というものになっています。登録済みの機器が2台の場合は普通にBlueTooth機器を使用する場合と同じ(近づいたら接続、離れたら切断)という動作になります。3台以上の場合は、直近で登録した順に接続を試みる(どれかの機器が切断した場合も同様)ので、かなりややこしい動作になります。例えば、会議中に電波が悪くなったり、ペアリング機器から離れて、イヤホンとの接続が切れた場合に、次に登録したデバイスに接続されてしまい、イヤホンとの接続が戻ってこないなんてことになります。仕事の場合はPC、業務用携帯とマルチポイントで接続して使用します(Web会議中に着信してもイヤホンしているとなんだかんだ気が付きません)。で、対応しているのはJabraの2機種とSBH82Dだけとなります。ただし、機器によって、それなりに癖があり、快適に使えるのはElite Active 75t(表からは外しましたが、Elite 75tも同じです)だけです。他の機種は、Web会議中に着信すると、着信側の音声に切り替わってしまい、強制的に電話のほうの対応にかからざるを得なくなります。あとElite 65tのほうは「Call from xxx」とか誰からかかってきたかをいちいち読み上げてくれる機能が付いていて、仮に電話の操作を「後で出ます」にしても読み上げが終わるまで会議に戻れません(しかも、この読み上げが絶妙に遅い)。よっぽど不評だったのか75tでは会議音声は通ったままで、呼び出し音の代わりに「ププッ」と断続的に呼び出しが入るだけになりました。
WF-L900やXperia Ear Duoについてはこの機能がなくて残念ではあるのですが、実は開放型イヤホンの場合はなくてもあまり問題になりません。なぜなら、外の音が聞こえるので、着信を聞き漏らすことはあまりありませんし、なんだったら、会議に参加したまま電話に出られます(ただしものすごい疲れます)。
次に操作方法ですが、まあ、これは各機種違いがありますよ、程度の話です。操作性のところでもう少し説明します。
次が装着性。これは耳につける行為の容易さを書いてます。完全無線イヤホンなんてどれも同じなんじゃないの、という話があるかもしれませんが、結構違います。まず、Xperia Ear Duo, STH40D, SBH82Dですが、これはかなり特殊な形状のイヤホンで、基本的には両手で装着します。この両手で、というところが難点で、歩きながらイヤホンケースから出しつつ装着、が非常に難しいです。というか結構な確率で落とします。すると、壊れないまでも塗料が削れるとかそういうことは覚悟しないといけません。STH40DとSBH82Dは左右のイヤホンが有線でつながっていますので、そういう意味では両手を使用する必要はないのですが、筐体がプラスチックでかなり脆いので、両手で扱ったほうが無難です。WF-L900は後述した通り、装着が若干難しい(つまり時間がかかる)ので、Web会議とか、電話に出るときには若干のもたつきはあるかもしれないです。
装着感①、②ですが、①の方はいわゆる「付け心地」だと思っていただいて構いません。基本的に開放型の方が圧迫感がないので、良い評価になっています。ただし、両耳が有線でつながっているSTH40DとSBH82Dはかなり下に引っ張られる感があって、総合的には普通、の評価です。Xperia Ear Duoはかなりいいです。慣れるまでは耳たぶが挟まれている感があるのですが、あまり気にならなくなります。結構重いはずなのに別に疲れる感じもないのが不思議です(むしろ下に引っ張られることで耳にホールドされている感じがある)。ただ、耳たぶを挟むという構造上、マスクとの親和性は悪い(マスクも同時に挟むか外側からマスクをすることになるので)です。WF-L900は開放型の圧迫感のなさはばっちりなのですが、穴あきじゃない部分(写真だとわかりにくいが半球のような形状になっている)が意外と耳に当たって気になる点がマイナスでした。Jabraもついでに書いておくと、t75は非常に良いです。t65は耳に無理やり突っ込んでる感があり、慣れれば我慢できますが、そこまでいかずにギブアップした人もいるのではないかと思います。
②の方はランニング時の評価、ということで、振動などで外れないかという点になります。この点、WF-L900を装着しての初回のランニングは相当不安でした。直感的にあ正確な装着を行うことが難しいのです。半球部分がすっぽり収まるように耳につけた後、イヤホン本体を後ろから前に回して出っ張りを耳たぶの隙間にねじ込むような感じ、という説明で、公式に動画もあるのですが、肝心の部分が全く見えず、やり方が分かりません。装着の原理についてはこのリンクが一番わかりやすかったです。
で、理解した結果わかったのは、取り換え可能な出っ張り(普通のイヤホンでいうところのイヤーピース)のチョイスが非常に重要だったということです。一般的な耳の穴人ねじ込むタイプのイヤホンは、私の場合は、買ってきたままの状態(たいていはMサイズが取り付けられて出荷)でほぼ間違いなく装着できるのできます。これは、通常のイヤホンの場合は、耳の穴の大きさが重要だからなのですが、WF-L900の場合は、耳の外側のくぼみに出っ張りを収めるので、多分個人差がものすごいです。私の場合はSサイズにしたら合いました。大は小を兼ねない、というのがポイントだと思います。それに気が付くまで、ではありますが、私の耳でこんなにおさまりが悪いのは初めての体験でなかなか驚きました。
実際、はまってない状態で走るとグラグラして、簡単に脱落しそうな感じで、かなり怖いです。初回に走った時は、もっと気温が上がって、汗をかくようになってくるともう駄目なんじゃないかと思いました。ちなみに、汗をかくとダメなのはJabraの65tも同じで、するっと落ちます。ただ、ぬるっと取れていく感じなので、予兆に気が付けば落ちる前に耳を押さえることは十分可能。
ちゃんと装着できるようになった後は逆にそこそこの圧迫感(耳のふちが押される感じ)があって、ある意味普通のワイヤレスイヤホンに近い感じになりました。うまくついていないときはその辺は逆に気にならなかったので、少し残念。まあ、まだ正しく装着できていないのかもしれません。
堅牢性、はSony製品のためにある項目ですね。WF-L900は本体重量も軽いので、多分、落としても大丈夫なんじゃないかなー、と思わなくもないですが、そこまで信じられないので、普通、としてます。Xperia Ear Duoは落とすと基本的には傷つきますので、微妙、にしてます。STH40DとSBH82Dはプラスチック&複雑な筐体で、保証期間内に壊れること必至です(STH40Dは1つ壊しました)。
操作性①ですが、これは、キー、パッド、スイッチの反応です。ダブルタップがちゃんと認識されるか、遅延なく反映されるか、といった点を見ています。Xperia Ear Duoはトリプルタップが超困難で、たいていシングルかダブル(またはシングル2回)で認識されるので、事実上シングルタップしか使えません(ギリでダブルタップまで)。WF-L900はワイドエリアタップという機能が付いていて、本体ではなく、本体の近く(耳とほっぺたの間とか)をタップすればよく、ダブルもトリプルもほぼ確実に拾います。ただし、逆に何もしてなくてもシングルタップを拾ってしまうだろうことから、可能な操作はダブルかトリプルのみです。なので、反応は良くても操作時間そのものがかかる印象です。Jabraはプッシュスイッチなので、こんなの関係なくない?って思うかもしれませんが、意外と反応しないときもあるので、普通、としています。
で、操作性②ですが、これはイヤホン本体で可能な操作のバリエーションの評価です。割り当て可能なキー、操作の数が主な評価のポイントです。で、WF-L900は悪い、です。操作性①にも書きましたが、可能なオペレーションが左右のダブルタップ、トリプルタップなので、合計4つしかキー割り当てができません。しかも、割り当てがいくつかのパターンから選択になっていて、いい組み合わせがないという。結局右に「再生コントロール」、左に「曲選択」を割り振ってますが、再生コントロールにも曲割り当てにも「次の曲へ移動」があって、すごい無駄。気づいたと思いますが、音量をコントロールできません。せめて再生コントロールに割り当てられているのが「前の曲」だったらよかったんですが。ただ、なんでここにそんなに不満をぶつけているかというと、Xperia Ear Duoは、音量コントロールはタッチパッドを上下にスワイプで出来て、タップによるコントロールは、完全に自由に割り当てができた&ジェスチャーコントロールという操作もあった&読み上げとかほかの機能も色々使えた、ということで単純にものすごい性能が悪くなっていると感じてしまうんですね(まあ、両方買っている人が何人いるかって話ではあるんですが)。ソフトウェアアップデートでどうとでもなると思うので、マジでなんとかしてくださいって感じです。
ジェスチャーコントロールは、この表の中ではXperia Ear Duoだけの機能で、頷く動作や首振りの動作をキーとして割り当てられる、というものです。Xperia Ear Duoとしてはそれほど積極的に使いに行く機能でもないのですが、操作が4通りしかないWF-L900には実装してもよかったんじゃないかと心の底から思います。これを再生/停止に割り当てられるだけでも評価は「良い」に跳ね上がると思うのですが。
充電、充電ケース、防水・防滴はそのままです。Jabraはスポーツ向けでなくてもIP55なのに、ソニー製品はいまだにIPX4です(しかもこちらの方が高い)。特にXperia Ear Duoは汗で壊れるくらいの感じ(1回で壊れたわけではない)だったので、ソニーのIPX4相当、はかなり不安があります。外れやすさとコンボでランニング時の恐怖はかなり高いです。ただ、開放型ということもあって、充電ケースは持ち歩かなくてもいいかな、と思える初のイヤホンで、実際使ってみましたが、この点は良かったです。
スピーク・トゥ・チャットは自分が話すと、音楽再生を15秒止めるという機能で、何度も試してはいませんが、屋外で機能をOnにして少し話したら機能したので、便利かもしれません。ランニング中に一人でぶつぶつ話してしまう人には向かないかも。息切れとかでも拾ってしまうかは未検証です。
あと、これはXperia Ear Duoユーザしか気にしないでしょうが、通知の読み上げ機能、時刻通知機能(毎時の自動通知と割り当てキータップ時の現在時刻通知)、装着中のメッセージ(装着時、自宅、職場など登録した場所の発着時のメッセージ)などはないです。
開放型、ということで、この製品もデュアルリスニングをうたっています。個人的にはランニング中の安全確保の観点からはこの機能はマストです。他社製品だとヒアスルー的な機能に頼ることになりますが、外音取り込み性能が低いか、ホワイトノイズが大きいかがほとんどなので、そもそも電気も使わないで外音を取り込めるこの方式はよいと思います。ただ、ほかの機種のレビューで書いていますが、基本的には大きい音のほうが聞こえて、小さいほうがBGMみたいな感じになるので、その辺は好き嫌いが分かれると思います。
上記の評価に書いた通り、装着さえうまくなれば、そして、汗に耐えられるのであれば、おすすめです。しかし、リングドライバーユニットは防水・防滴じゃないって書いてあるんだよなぁ。。。あと、何とかジェスチャーコントロールとかでキー操作を増やせないのか、この点は切に祈っております。
Web会議だと気になるのはこちらの音声が、周囲ノイズなしに伝わるか、というところになるかと思いますが、こちらは未検証。大丈夫なんじゃないかなぁ、と信じたい。Xperia Ear Duoでもその辺はちゃんとしていた印象(そこそこ風の強い屋外で電話しても相手にはちゃんと聞こえていたことを確認したので)。ただ、ここで気が付いて驚いたのが、WF-L900はイヤホン単体でペアリングができないという点。なんと、ケースの方にペアリングボタンが付いていて、ふたを開けて、イヤホンを取り出さない状態でペアリングボタンを押します。BlueTooth機器は何らかのボタンやタッチ機構があって、それを長押し、というのがお約束なので、かなり焦りました。せめてケースのボタンに「ペアリング」って書いておいてほしかった。
自分が会話を始めると設定秒数だけ音楽再生などを止める機能で、イヤホンを外さなくても会話できるよ、という機能。ちゃんと調べたわけではありませんが、A2DP(音楽性採用のプロファイル)などでの接続時に発話を検出(あ、とか、え、のような単一の語程度では反応しない。ぼそっとつぶやく程度でも反応しない)すると、再生が止まる作りの模様。まあまあ、よくできている印象。ちなみに、スマートフォンに限らず、PCに接続してYoutubeを聞いているときでも機能します。逆にWeb会議で発言した瞬間に聞こえなくなると困るなーと思いましたが、そこはプロファイルで判別している模様(マイクも使う場合はHFPなどのプロファイルを使用する)。なので、この機能はずっとOnでもよさそう(バッテリーの減りがどうなるかはわかりませんけど)。
表のところで説明した通り、通常使用の反応は悪くなかったです。ただ、シングルタップにキーを割り当てられなかったのは、操作レスポンス、操作自由度の観点からはもったいなかったと思います。イヤホンの装着感を直すために触るとまあまあ反応してしまいます。まあ、これは仕方ないとして、WF-L900を装着した状態でRadikoを聞きつつ朝食をとったところ、咀嚼でかなり反応します。これはかなり困ります。なぜって、左右どちらのイヤホンが(または両方が)反応したか全然わからない。音量コントロールは割り当てられないな、と思いました。
まあ、お行儀のいい人にとっては関係ない話。この辺の検知は機械学習でやっているものと思われるので、ファームウェアアップデートなどで精度が改善されるといいなあと少し思いました。
Xperia Ear Duoと違って、ダイナミックノーマライザ(音量レベルの低い曲を自動で補正する機能)がなかったのが、少し残念と言えば残念。まあ、オーディオマニア的に入らない機能なのかもしれませんが、開放型の場合、CDからキャプチャした音源の音量が小さいと全然聞こえない場合がたまにあり、とりあえず入れておいてほしかったな、と思いました。まあ、普通はイコライザが充実していればいいんだと思います(こちらはカスタム含めてかなりプロファイルが用意されていた)。
他にも立体音響をサポートしているということなのですが、測定等が面倒くさくてまだ試してません。まあ、これはまたの機会に。